●腐食箇所の修理
 
 程度の良いボディとはいえ、怪しい箇所は当然あります。右リアのコーナー部ですが、パテ割れして穴が開いています。適当に再現されたボディライン、消えたプレスラインにCピラー上部までボカされた塗装・・・・補修跡です。

 
 パテを剥がしてゆきますが、激しくシワの寄った鉄板が露出するとともにブ厚いパテの層が現れました。とにかく全て除去するしかありません。粉爆覚悟のパテ剥がしが終わりますと、壮絶な補修跡が出てきました。この箇所を激しく潰してしまい、パネルに孔を開けて引き出し板金を行ったようですが、全く戻っていません。腐食穴の原因はこれです。裏からタール状の物質を塗って防錆はされていましたが、ここはSJ10やSJ20では泥が溜まる要注意箇所。僅かな隙があれば、保持した泥から腐りが発生します。

 
 ここは裏には給油パイプ、マッドガードにパイプのガードが装着され、分解式とはいえ袋構造になります。ボディパネルの合わせ目もあるので非常に叩きにくいので、引き出し板金でいこうと判断されたワケです。確かに、この折りたたまれたような皺は曲者です。しかし、この方法が最善だったかというと、どうでしょう。右画像は私がハンマーとドリーだけで板金したものです。後々の錆のことを考えると、開けた穴くらいは塞いでおきたいですし、元の鋼板になるべくダメージを与えぬようにすべきです。見た目OKな修理と、今後のことも考えた修理。自分のクルマであれ他人のクルマであれ、そのクルマに愛情があるのか、ないのか。そういう問題だと思います。

 
 さて、形状は大体元に戻しましたが、かなり寸法が狂っているのと、鉄板が死んでしまっている部分がありますので切り貼りします。このコーナー部分は実は平面ではなく、真ん中が膨らんで緩やかに丸みを描くというのが純正形状です。それを知らずに板金してしまうと、真っ平らにされてしまう事が殆どです。純正の形状をよく知っている以上、真っ平らは許せません。

 
 サイド。こちらは裏からフェンダーをスポット溶接する為にアーチの縁は膨らんでいます。裏からシーラーは入っていませんので、ここも錆の名所です。適当な補修で隙間が広がった事もあって、やはり錆びて穴が開いてしまっています。ここも新たにパネルを製作して、入れ替えてしまう事にします。このような状態の鉄板は、どう防錆しても止まりません。


 型紙をもとに鉄板を切り出し、板金します。このパネルは少し大きめに作っておいて、腐食箇所を切除してから細かい寸法を決めてゆきます。上から貼り付けたりフランジ溶接であれば多少の隙間は問題になりませんが、とにかく鉄板の重ね合わせは錆の元ですので、こういったパネルは突合せ溶接でいきます。突合せ溶接の場合、新規製作したパネルと元のパネルに隙間があるとマズイので、しっかり寸法を合わせてピッタリ合うように整形する必要があります。


 
 歪みを抜きつつ突合せ溶接して、修復完了です。今回は裏の補強も必要最低限だけ残して切除し、フェンダーの固定も裏からではなくボディパネルに直接接合する事で重ね合わせ部分を無くしました。本来はフェンダーとボディパネルの継ぎ目にはシーラーが入り、これもまた後々割れてしまい錆の原因になります。今回の補修ではそういった不安を全て解消できました。因みに使用している鉄板はZERO-8の残骸から切り出したものだったりします・・・この後、若干パテを盛って面調整する予定です。


 
 さて、下側をやっつけましたら、今度は上側・・・パテ割れの様子からして、このコーナー部は全パテです。色が斑になっていますが、ここがボカし際です。ぺりぺり剥がれて迷彩になっていますが・・・・・・・・SJ10やSJ20はジムニーシリーズの中でもパネルの境目が多いボディ構成ですから、こんなところでボカさずにブロックごとに補修塗装した方が格段に綺麗に仕上がるのですが・・・・・なぜボカしたかと言いますと、ご覧のように色がかなり違いますので。ブロック塗装にすると色違いは目立ってしまうからでしょう。

 
 全面パテのこの部分、真ん中あたりの深い凹みと、上の方のサビ、全体的なパテ割れが気になりますが、これらの補修の為に全パテとは大袈裟な事を・・・・・・・・・と思いつつ、パテを剥がします。が、やはりと言うか下側同様、かなりブ厚いです。一体どうなっているのか?



 
 こうなっていました〜♪ また弾痕の登場です。これだけ形が狂っていると、もはや新たにパネルを製作して切り貼りした方が仕事が速いです。が、ここは完全なる袋構造。溶接部裏側からの防錆やシーリングは不可能です。スポットシーラーも、私のように半自動を使う場合は燃えてしまいます(耐熱ジンクスプレーなら可ですが、シーリングは出来ません)。裏から手も入りませんので板金も困難。よって、できる限り表から修正したうえで、細かい形状出しはパテに頼ることにします。

 
 裏からドリーを入れられないのでストレスが溜まりますが、ある程度板金して弾痕を埋めます。パテを入れることに罪悪感を覚えますが、パテ自体が悪い訳ではなく、現代のパテは高性能でサビも呼びにくいものになっています。分厚いパテは後々パテ割れを起こし、そこから浸入した水が腐食を呼びます。あるいは、このような裏から防錆できない場所を切り貼りした場合もパテは薄くともパネル裏側からの腐食が起こり、パテを割る事になります。パテの性能を生かせるように、入熱を少なくして薄付けで済ませるというのも錆びない補修としてはアリだと思います。


 ひとまずパネルの隙間に防錆剤を流し込み、パテ整形後にサビ止めにラッカー系の塗料を吹いておきました。最終的な面出しはウレタンサフをしっかり吹いてから行います。このように、一気にボディ補修して最後にサフではなく、セクションごとにサフまで終わらせておかないとすぐに錆びてきますので注意が必要です。一気に塗装剥離して作業してやると気持ち良いのですが、鉄板を普通に転がしておけば2日で錆びます。それと同じ事が、塗装を剥離したボディにも起こっています。かなりレストア環境の整ったファクトリーであれば別ですが・・・・・



 
 続いてはフェンダーの裾に開いた腐食穴です。ここも定番箇所なのですが、なぜこんな所が錆びるのかと言いますと、実は厚塗りされた純正のチッピングコートが原因です。入念に厚塗りされているのですが、これが硬化して鋼板と剥離し始め、そこに泥が溜まって腐食に至ります。20年以上屋根下にあってこのボディでもこの調子ですから、現状で状態の良いSJ10やSJ20にお乗りの方は是非ともアンダーコートをやり直しておいて頂きたいです。

 
 ここは裏からアクセスできますので、心置きなく切り貼りできます。腐食部分を切除し、新たなパネルを製作します。この段階で2作目ですが、最終的にはこれでも納得できずに3作目の製作となりました。この部分も、意外と複雑な形状をしており、苦労させられました。

 
 ピッタリ合わせて、突合せ溶接です。特にここは泥が思い切りかかりますので、重ね合わせは厳禁です。純正同様の形状を復元する事ができました(背後に失敗したパネルと元のパネルが・・・・・)。残る腐食穴は多分3箇所くらいです!

 
 っと、想定外の穴が出現しました。ここもアンダーコートの下で育まれたサビ穴です。このような穴はそそくさと埋めてしまいます。

 
 防錆処理した後に、防錆剤が半乾きで接着力の高い間に薄くパテ入れします。次は塗膜の厚みマイナス1枚くらいまで研磨し、タッチアップペイントを入れて研磨すれば補修完了です。こんな調子のサビが多いので、勢いあまってフルレストアになってしまいそうですが、グッとこらえて寸止めです。ガンガン補修してゆくよりも気を遣いますが、これだけ気を遣っても出来上がるのはピカピカのフルレストア車ではなくて「やつれたヤツ」でしかないのがニクイですね・・・。

 
 つづきましては、SJ10、SJ20なら必ず気になるベンチレーターのサビをやっつけます。ここは本当によくサビるポイントですが、スリット内が茶色いのは頂けません。非分解ではなくボディから外せる構造なのが救いです。ヒーターを取り外す必要はありますが、水回りのメンテナンスのついでにやっておいて損はありません。

 
 同時にヒーターもコア、水路ともに清掃しておきます。バンは幌車と比べるとバルクヘッド内にワイパーモーターがある関係で知恵の輪状態ですが、トレーを外して助手席側から上手い角度で着脱することが出来ます。スリット内部に水回り(の一部)がスッキリしたところで、ちょっと気分を変えて別なところを修理していきたいと思います!


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