●サスペンション

 ここでは8manoが考えるサスペンションについてまとめています。まずはじめに、サスペンションの設定は個人の好みによるところが大きいので、そこのところは留意ください。リーフスプリング式サスペンションの変更は改造申請が必要である事もお忘れなく!

 よく質問のある項目ですが、SJ10やSJ20にSJ30〜JA11まで用の社外リーフキットを取り付けると必ず前上がりになります。これはSJ10,20とその後のモデルではフレーム形状が違うためです。正確にはスパンも違います。車高は高い方がサスペンションを交換した実感もあるし格好も良いのかもしれませんが、ここでリアを上げてバランスをとるのか、フロントを調整するのかで結果は随分違うと考えています。
 それと関連してプロペラシャフトからの異音も質問の多い項目ですが、単純に車高が上がりすぎてユニバーサルジョイントの角度に無理が出るのと、シャフト長が足りなくなりスプラインの嵌め合いが浅くなる事が原因です。このあたりに不具合を抱えているとトランスファのベアリング類を確実に痛めるので対策は必須です。
 実際、過去にはJA11用のサスペンションをそのまま組み込んでリアシャックルで後ろを持ち上げていて上記の問題は一通り経験してきました。短期的にはどうでもよいですが、長期的に見ると未対策のままでは改悪以外の何者でもありません。


 以上のことも踏まえて、8manoのサス設定というのは「車高はなるべく低く、縮み側のストローク重視」です。車高が高いというのは、ボディクリアランスは広がるかもしれませんが安定性は悪くなります。いくらボディを上げても最低地上高は全く変わりませんので、タイヤのサイズとストロークと相談しながらなるべく低く設定するべきだと考えています。ボディの干渉はライン取りでどうにかなる部分もありますし、いくらボディを当てにくくしたところで転倒してしまったらダメージはもっと大きいです。



 リアリーフはブッシュの容量が大きいJA11用のペニーレーン製品。シャックルは10mmロング(これが味噌)のDUNEフラットシャックル。ショックはモンローのガスマグナムでストローク200mmのものを探してきて装着しています。画像の状態でフルバンプしていますが、フェンダーアーチを拡大しているのでボディへの干渉はありません。おそらくノーマル状態のボディだとフェンダーが盛大に板金されます。現状でもショックタワーと燃料配管に若干干渉していますが。

 フロントはスパンが十分に長い当時のSORAの親をベースにJA11のリア用と、ほぼ同スパンで反りの違うものを組み合わせています。SJ10、20の場合は親リーフスパンが重要です。シャックルは地形に当たる事があるのでタニグチの板厚のある25mmロング強化シャックル。ショックはIMPSのロングストローク210mm、バンプストッパーは某スズキ車の8の字型のものを使っています。

 現在、フルストロークさせると前後がほぼ均等に動きます。そして、ジムニー独特と味付けとして初動は非常に硬く、大きくゆっくりとした入力に対しては画像のように柔らかくストロークする設定になっています。この味付けはキャンバーなどの一般的には恐怖とされるステージで非常に有効です。初動を硬くして重心移動を抑えているため、張り付くような安定感を作り出しています。よく、安定していると言われますが、その理由は車高の低さと初動が硬いサス設定によるものです。この状態は非常に走り易く、大変気に入っています。

●メンテナンス
 
 画像の左側は使い古しのUボルトとナット、ワッシャーです。右は新品ですが激しく遊んでいくとこのくらい開きます。定期的にに交換すべきです。また、オーバートルクで締め付けられる事が多い箇所なのでワッシャーやボルトも相当痛みます。基本的に、ボルトナットはある程度まで手で締めこめるようにしておきたいところです。
 また、リーフピボットやブッシュも定期的にグリスアップしてやるのが良いです。ブッシュは耐ゴム性に優れたシリコン系やラバーグリース、ピボットやボルト類は焼きつき防止にカッパー系と、部位によって使い分けています。ギシギシときしみ音がしないだけでなく、バラしも楽になりますので必須です。忘れがちですが、車高をいじったら必ずトーインを調整し直しておきましょう。

参考締め付けトルク
Uボルト 300〜450kg-cm
リーフピボット 450〜700kg-cm
シャックル 300〜550kg-cm
ショック 上220〜350kg-cm 下300〜500kg-cm

●中折れシャックル(使用せず)を考える
 
 主に伸び側ストロークをアップさせる部品です。この部品はトラクションがしっかりかかるように煮詰められたサスでしか効果を発揮しません。まず、アクスルジャダーを確実に抑制できるトルクロッドは必須です。そしてシャックルの長さが有効になる長さのスパンでしっかり縮むバネ、それを受けとめる超ロングストロークのショックアブソーバー(縮みを考えるとフロアーを突き破るほどのアッパーマウントが必要)を組み合わせて初めて仕事をこなします。
 画像の状態は両輪が浮く寸前までジャッキアップしてリジットラックに載せた状態です。いわゆる、中途半端なサスと中折れシャックルを組み合わせた例ですが、ご覧のとおりストロークは変わりません。ショックは230mmストロークです。この状態で、どちらのバネがマトモに仕事をしているかというと、普通のシャックルの方です。正確には、中折れシャックルの方のバネはまだ仕事をしていないのでもう少し伸びます。
 しかし、構造上ピンtoピンが長くなってしまいがちなこのシャクルだと反対側のバネは十分に縮む事ができません。つまり、反対側が縮む事による押し付けが不十分なのでバネは仕事をしないまま垂れ下がるだけとなります。加えて支点のひとつがブラブラ動く状態ですから、アクスルジャダーが発生しますので、逆相乗効果で伸びているのにトラクションが全くかからない状態となります。

 
 足を伸ばすだけなら簡単です。シャックルを無くせばショックの長さ分は伸び放題。それでも左右同じですね。中途半端な状態に中折れシャックルを組むというのは、右画像と同じ事だと言えます。何となく中折れシャックルを組むのなら、走破性は確実に落ちるという事ですね。
 リーフスプリングの場合はショック長かリーフスパンでストロークが決まるのはご存知のとおりですが、縮み側のストロークが極めて大きくて反対側の駆動輪に対してかかるトラクションが十分以上であるときに、そのトラクションの範囲を拡大できるのがこのシャックルの利点です。テラフレックス社のレボルバーシャックルなどは、この利点に加えてスイングすることでフリクションを低減していますが、どちらかというとこのスイング機構の方が恩恵が多いように思います。

●目に付くダメサス
 ただ車高を上げるだけなら関係ありませんが、プレスで反らせた改造リーフに長いシャックルでリフトアップというのは考え物です。まず、シャックル自体で車高が上がると考えるのはナンセンスです。シャックルはリーフが水平になったときに辻褄を合わせる役目ですから、長くなれば多少は上がりますがバランスが悪いとリーフを突っ張るだけで十分に動きません。乗り心地も最悪です。
 車高を決めるのはリーフのキャンバー量ですが、それよりも重要なのはスパンです。キャンバー量が増えたという事は、それに見合ったスパンが必要になります。短いスパンのリーフを反らせたところで、スパンは足りなくなるので純正シャックルでは組み付ける事すら不可能になり、結果ロングショックで「何とか無理やり組んでいる」状態になります。このレベルになるとシャックルが立っているとか寝ているとかの問題ではなく、シャックル無しと同じ状態(伸びきり状態)ですから、乗り心地悪く縮まず伸びない・・・・もう良い事は一切ありません。
 見た目重視で街乗りリフトアップには良いかもしれませんが、クロスカントリーにおいては恐ろしい事になります。車高は高くて勇ましいですが、キャンバーで踏ん張れないうえに重心もやたらと高いので、少しのギャップに一輪を乗り上げた時などに「フワッ」と車体が傾き転倒します。この現象はキャンバーだけでなく、あらゆる状況で起こりますので、大変危険です。「ジムニー専門店」でもこういう足を作るところが見受けられますので、注意してほしいところです。

 プレス改造リーフ
 無駄に長いシャックル
 ショック延長スペーサー

 この三つは要注意です。競技なら別ですが、クロスカントリーフィールドでの転倒などは避けなくてはならない事でありお楽しみではありません。腕を磨く事も大切ですが、安全な車作りも心がけたいものです。