●キャブレターメインテナンス

ジムニーエイトに採用されている気化器は、三国製のサイドドラフト式SOLEX(32PHD)で、アクセルとチョーク機構を連動させ、混合気を適切に制御するオートリターンチョークを採用。また、排ガス対策でセッティングがリーン状態に振られている為、加速ポンプによりこれを補っています。更に、減速時に急激にスロットルバルブが閉じぬようにダッシュポットを設け、燃焼の悪化を防いでいます。エイトに搭載されるF8A型エンジンを、多くのマニアに名機と言わしめた背景には、このキャブレターの存在も大きいと思われるます。しかしながら既に製廃。ガスケット類のリペアパーツも入手困難故、定期的に整備して維持してやるべきですね。今回はストックのうちの一機を軽くOH。エイト乗り以外には全く意味の無い(?)企画。

●分解

キャブレターの作動原理や構造は技術家庭科の教科書にも掲載されているので割愛。基本構造さえ理解していれば整備は容易です。この程度のOHでは、Oリングやガスケット類の点検、交換と、本体の概観及び内部、各ジェット類の清掃が主な作業となります。

●ボディの清掃
 
トップカバー(ダッシュポットとワイヤーのガイドを兼ねる)を外すと、左図の状態。ガソリンはドレーンしてあったのですが。右図のように綺麗に清掃。フロート室やメインボア等もクリーンに保っておきます。

●ジェット清掃

32PHDのジェットは、右から パイロットジェット、エアジェット、エンリッチメントジェット、メインジェットの4種。メインとエンリッチには前期、後期でそれぞれ異なる設定があります。詳細は下表。

メインジェット 前期 #105 (09491−21012)  後期 #107.5 (09491−21011)
エンリッチメントジェット 前期 #65  (09492−65001)  後期 #75    (09492−75001)
パイロットジェット #57.5 (09492−57002)
エアジェット #0.5 (09493−32003)

 
メインジェットはフロートチャンバー内に「これでもかっ」というほど堂々と鎮座していますので、すぐわかります。トップカバーを開け、小部屋の中に居るのがエアジェット。

 
そのすぐ隣にあるマイナス頭のプラグを外すと、パイロットジェットが現れます。

 
加速ポンプのリンクを外して、ボディから分離させると、ボディ側にエンリッチメントジェット。
上記4種を綺麗に貫通させてあげます。スラッジが酷いと針金状の清掃用具で掃除することになりますが、今回は粉末洗浄剤とエアゾールでの清掃で十分でした。間違っても針金で突くのは避けましょう。

●点検
各ジェット、ボディの清掃が完了すれば、各部の点検。

 
フロート。パンクに注意。フロートバルブも要チェック。内部にOリングが組み込まれているので、必要に応じて交換する必要があります。因みに、この部品はまだ出ます(13374−73000)。油面はスロットルボア中心12±1。点検窓が便利です。


ダッシュポット。スロットルバルブが一定まで閉じるとスロットルシャフトのアームがダッシュポットのロッドに接触し、ダッシュポットのロッドが押されてダッシュポット内のダイヤフラムが押されてオリフィスを介して空気が少しずつ大気開放されます。これによりスロットルが一気に「ばちょーん!!!」とアイドル位置まで戻ってしまい、燃焼が悪化するのを防いでいるわけですね。戻り時間が設定されていますが、手で押してみて2秒くらいかけてロッドが戻ればOKです。

●セッティング
これといって難しいセッティングを必要とするキャブではないのです。ジェットの番手をあれやこれやと弄るキャブでもない。すべての調整は「ベストアイドル調整」で賄われます。場合によって、検査ラインでこれを繰り返す事になるので、慣れておいた方が良いでしょう。先ずはリンク類の作動を確認し、チョークバルブがしっかり戻るか確認しておきます。

 
その1 スロットルアジャストスクリューを回して規定アイドルよりも高めの1000〜1200rpmにセット。


その2 アイドルアジャストスクリューを軽く締め込み、少しずつ戻して回転数が最高になる位置を探る。そこからスクリューを1/8回転だけ閉めこむ。


その3 スロットルアジャストスクリューで950±50rpmに調整しておしまい。CO1.0〜2.0%、HC800ppm以下が目標。
仕様に応じてベストアイドル調整は頻繁に行うべし。しかしながら、排気系やエアエレメント、点火系が健全でないと意味が無いので、基本整備は怠れないですね。